和蘭は地名だ。海沿いの郊外で、本当に何もない。人もいない、何か有名なものもない。強いていうなら、和蘭は「自殺の名所」だ。何もないからこそ、そして海の上を跨ぐ橋があるからこそ、名所となってしまった。
 彼女曰く、『・・・ ーーー ・・・』はモールス信号というらしい。『(トン)』と『(ツー)』でアルファベットを表す、離れた場所にメッセージを送る際に使われていたらしい。そして『・・・ ーーー ・・・』は『S O S』。

「じゃあ、あれって…!」
「夜空からのSOSのメッセージだよ。乾いた豆が転がるみたいな音は波の音。一回だけ、電車が通る音もした。」
 海近くの駅があって、人気のない場所、だから和蘭なのか。

「説明どうも。とりあえず、そっち向かえばいいよな?」
「うん。行こ!」

 駅に向かう様に走る。バスケを長年やってて感謝した、しばらく走っても、汗をかくばかりで息切れしない。
 次は、夜空からの着信があった。

「夜空!大丈夫か?!」
『朝日くん!夜空なら大丈夫よ?どうしたの?そそ、今日夜空帰せそうにないから、心配しないでね、っていう話。』
「何してるんだ?」
『ショッピングとか、いろいろよ!』

 嘘つけ、そんなわけないだろう…!

「夜空、聞こえてるか!心配すんな、絶対行くからな!待ってろ!」
『っ…んーー!』
『ちょっと…!』

 口を塞がれてるか、甲高い悲鳴が聞こえる。再び走り始める。先程よりも、一歩を大きく速く、目の前のボールを追え。和蘭は二駅先だ、電車待つよりも走った方が…

(速いはず…!)

 明日香も頑張って走っているな、弓道部も一応運動部なだけあるな。あと、もう少し……