今日は水族館に行った。

 夜空のことだ、美味しそう、と連呼しては、キラキラと目を光らせていた。

 伊勢海老、タラバガニ、イワシにクエ、まぁうん、夜空らしいと言っておこうか。

「凄いわ〜、ジンベイザメ…」
「でけぇな…」
「……」

 大水槽を小魚とともに優雅に泳ぐジンベイザメは、なんとも言えない美しさだった。

 静かに「黙れ」と言われているようで、無言のまま見とれてしまう。

 その夜、夕食でクエの煮付けが出たのは、ほんと偶然。

 ふわふわで、かつ味が染みていて、とても美味しかった。

 一方だ。

 部屋戻ったのはいいが、どうしても昨晩を思い出してしまって落ち着かない。

「「……」」

 この何も話せないような雰囲気…気まず過ぎる……!

「ふ、風呂、入るか…?」
「先入ってきていいわ…」
「ど、どうも…」

 どうしても意識してしまう。

 湯に顔をつけ、一人照れ隠しした。

 遠くでガラガラと、音がした。

「よ、よ、よ、夜空さん…///?!」
「ごめんなさい、やっぱり一緒に入りたくて。ダメかしら?」
「別に…いいけど…」

 ありがとう、と言ってぱぱっと手短に体を清めると、近くに来た。

「ふう…っふふ、何緊張してるの?」
「だって…昨日の今日だし…」
「朝日らしいわ…!」

 どうやら俺をからかうのが相当楽しいようで、夜空は満面の笑みを見せた。

「朝日…ありがとう。私を…助けてくれて。」
「っ!?」

 何を言っているのかと思った。

 消えかけていた記憶が蘇ってきた。

 俺は夜空を「救う」ために…いやそれは言い訳か。

 俺は自分の「エゴ」を守るがために「ループ」した。

 それを彼女には言っていない。

「あのとき、朝日が飛び込んでまで助けてくれなければ、私はきっと死んでいたわ。」

 なのになんだこの口ぶりは。

 何か知っているようにしか思えない。

「何か、知って?」
「いいえ全く。」

 知っていると自覚した後、そうか、と付け加えた。