満腹なのは裏腹に、ふたりきりの空間に心が落ち着かない。

 どうしようか…と辺りをキョロキョロする。

 そんなとき彼女はつなぐ手に力を入れた。

「私は…いつでも…///」

 なんちゅう誘い方だよ、この…!!

 可愛さに俺の何かがブチブチっと千切れた。

「もう、知んねぇからな?」

 姫抱きしてベッドに連れて行く。

 着崩れた布切れが本能を燻った。

 この熱が冷めぬうちに、俺らの夜が始まった。

 
 額に汗が滲んでは、夜空に落ちる。

 まだ3月なはずなのに、暑い。

 いや、熱いのだ。

 どうしようもなく熱くて、それでも止められないのはなんでだろうな。

 本能に飲み込まれてしまいそうな感覚があった。


「……ん?んん〜!」

 窓から入り込む日差しに目が覚めた。

 あ、そういえば昨晩は……

 変に思い出そうとしたのが馬鹿だった。

 かあぁ、っと顔が熱くなる。

 左腕がやけに重く、感覚がない。

 見てみれば、スヤスヤと眠る夜空の姿があった。

 まじまじと顔を覗いてみる。

 睫毛は綺麗で長く伸び、生白い肌はもちもちで荒れ知らずだった。

「…ん?あ、さひ?…」
「ごめ…起こしたか?」
「ううん…なんか、眩しくて…」

 呂律が回らず朧気な彼女は珍しい。

 とても新鮮だ。

「体調は?」
「案外大丈夫よ。少し…腰が痛いくらい。」
「ごめん…」

 クスッと笑うと、そうゆうものよ、と言ってくれた。

 この時間にも刻一刻と別れが近づいていると思うと寂しいが、その前にいい思い出ができたと思う。

 きっと忘れることはないから。

「風呂入るか?」
「そうね。」

 今日は何する、なんて話をして時間を過ごした。