トロフィーを持ち帰って来た夜空は安堵の顔を浮かべた。
俺を見つけ次第走ってくる。
そのまま抱きついては離してくれないでは無いか。
「夜空…!おめでとう、おめでとう!」
「あっ…!わた、しっ…!私ぃっ…!」
服が濡れる感覚がある、泣いているではないか。
「よく頑張ったな…優勝、おめでとう。」
「っ…!うわぁぁぁん!」
嬉しさが込み上げてきたのか、涙が止まらない。
そりゃそうだろう、全国優勝したのだから。
長くて辛い日を乗り越えて、この日が来たのだ。
嬉しくてたまらない筈だ。
「な、でよ…なんでいつもあんたが!全部持ってくのよ!おかしい!夜空!あんたさえ居なければ!」
「薫子…」
悔しい、いや憎しみに近いか。
歯を食いしばって、目に大粒の涙を溜めていた。
「なんで…?なんでなの…」
「薫子…!あんたね!」
「お前は早気に悩んだことはあるか?」
「「「!!!」」」
部外者は黙れ、と言われてしまった。
「そう言われても俺は部外者じゃないんだわ。愛しい彼女が傷つくのは見たくなくてね。」
「っ!!!」
「お前は早気に悩んで悩んで苦しんで、吐くまで練習したことあるか?…お前がいなきゃ!夜空はこんなに苦しまなかったのに!同じことしてやろうか?!お前さえ居なきゃ、ってな!」
カッとなってしまったが、これでいい。
「朝日…!言い過ぎよ…」
「俺は悔しかったんだよ!夜空があんなこと言われて苦しんでるの見てて!何も出来ねぇのが悔しかった…」
俺なりの復讐だ、って付け加えた。
夜空が薫子を怒れないのはわかってる。
「夜空は怒れねぇだろ?薫子のこと。だってまだ、『親友』、だもんな。」
「……は?」
「なんで、それを?」