前回大会優勝者の薫子と準優勝の夜空は反対の位置に置かれた。

 決勝トーナメントは、射の数ではなく、とにかく相手が外すまでの耐久勝負となる。

 どちらかが外すまで終わらないエンドレスゲームなのだ。

 明日香は準決勝で夜空とあたり、23中という激戦の中、白星となった。
 
 決勝に上がってきたのは、予想通り夜空と薫子だった。

 去年もこの2人の戦いだった。

 接戦を勝ち抜いたのは薫子で、それまで安定していた会が崩れてしまった夜空は準優勝だった。

 これは俺しか知らない事実だが、あの時薫子が先に矢を外したが、わざとだったという。

 後に矢を射る夜空は当たれば優勝というプレッシャーがのしかかる。

 それに耐えられずに外す、と言ってるのを偶然聞いてしまったのだ。

 結果は彼女の読み通りになってしまった。

 どうしたものか、またこんなことがあれば…今度こそ夜空は…

「何悩んでるの?」
「あ、明日香さん…!あいつまた夜空を貶めようとするんじゃないかって…」
「!っぷ、あはは!朝日くんは、心配性だなぁ!あはは!」

 心配性の何が悪いと思うが、彼女は大声で笑っている。

「夜空があれから変わってないと思ってんの?だったら彼氏なんてやめて。あ、別に奪うためじゃないからね?」

 そっちこそいらない心配を…と言いたい。

「夜空は変わったよ。あんなやつの踏み台にはならない。黒い彼岸花でしょう?」

 彼岸花の1つの花言葉がピッタリだ。

「そうだな…!情熱を持って花を咲かせろ、夜空…!」
「そうそう、それそれ!」

 地を破り美しく開花するのだ。