セミがうるさいほどに鳴いている、今日8月3日。
俺らは京都に来ている。
断じて旅行では無い。
「夜空、平常心だよ!わかってる?!」
「大丈夫よ、明日香。私は変わったわ、負けないから。」
今日は弓道の全国大会初日だ。
夜空は今年も個人で全国を決めた。
それは明日香も同じようだ。
「お互い頑張りましょう。」
「今年こそ薫子を倒すぞぉ!」
「えぇ!」
これが夜空の弓道人生最後の大会になりそうだ。
「あら?弱虫さんと腰巾着さんじゃあありませんか。今年も心を折られに来たんですかぁ?」
こいつさえ居なければ。
「薫子…あんたこそ夜空によくイチャモンつけるけどさぁ、やめてくれないかなぁ?!!」
「何怒ってるのよ。真実を話しただけで折れるような弱虫さんは私の踏み台。当たり前でしょう?」
「薫子…!!あんたねぇ!」
殴りかからんばかりの勢いだ。
このまま放っておけば、ほんとに殴ってしまいそうだ。
「明日香、大丈夫よ。」
「よ、夜空…」
「薫子、私はもう貴女なんかに屈しないわ。何とでも言えばいいわ。ただ、1つ言えるのは次踏み台になるのは貴女よ。」
行きましょう、とその場を離れた。
彼女の姿は孤高の彼岸花のように美しく堂々としていた。
「夜空、」
「朝日、私は負けないわ。だから、トロフィーを持ってくる私を待ってて。」
「…!おぅ。」
つい最近までの夜空とは違った。
自信に満ちた顔をしている。
この大会は的中制5人立ちで、1回二手だ。
リーグ内で上位2名が決勝トーナメントへ行ける。
第4リーグには夜空は大前で、第2リーグには明日香は落前、第1リーグには薫子は落でいた。
彼岸花は毅然とした態度のままだった。
結果、夜空皆中、明日香3中、薫子皆中。
全員がトーナメントへ進んだ。