一年が経ち、わたしは高校生になった。
 家から高校までバスと電車を乗り継いで、片道一時間半。早起きは大の苦手。それでもきみを追いかけて、きみに会いたくて、頑張って通う。
 高校に入ってからは、イメチェンを試みた。眼鏡をコンタクトに変えて、縛っていた髪も下ろして、スカートも少し、ほんの少しだけ短く詰めてみたりして。おかげでいじめは受けなかったけれど、なぜか少し浮いてしまって、結局友達はできなかった。

 あの日の音楽室ではないけれど、わたしはまた今日も、きみと出会う。

 扉の前で驚いた顔をして、わたしを見つめるきみ。楽譜が舞う。けれどそんなものには目もくれずに、わたしはきみが音楽室にいることに感動して、涙を零す。ぽろぽろと泣くわたしに、きみは困惑しながら駆け寄って。でも、優しくなぐさめてくれる。大きな手は温かくて心地良い。
 
 たとえ、きみがわたしを覚えていなくても。また、忘れてしまうとしても。
 わたしがずっと前からきみを知っていることは変わらない。わたしの気持ちはなにがあっても消えはしない。
 だから、何度だって恋を始める。
 
『ずっと前から、わたしはきみが好きでした』
 そう、きみに言える日が来るまで。