*
この瓶は、魔法の瓶だ。
ちーちゃん、だっけ。
そんな風に名乗る小さな子どもから、高2になったばかりの頃にもらった瓶。
「この瓶には、魔法がかかってるんだよ」
「こっちで待ってるからね」
よく分からない言葉とピンク色のパウダーが詰められた瓶だけを残してどこかへ消えたその子。
最初は、化粧品なのかなって思った。
アイシャドウとかチークとか、そういう風に使うのかなって。
試しに手首に塗ってみたら、手首にあったホクロが消えたからびっくりした。
たぶん、だけど。
このパウダーは、“いらない”って思ったものを消してくれるんだと思う。
現に、ホクロのこと嫌だなって思ってたから。
だから、わたしが自分のことを“いらない”って思うなら──。
この世界から、わたしの存在を消せると思うんだ。