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 昼休みになった瞬間、七海くんは逃げるように生物室へ駆け込んだ。
 椅子に座った彼は、俯いたまま動かない。

「……七海くん……」

「──岩城?」

 七海くんは、わたしの姿を探すように視線を巡らせる。
 カメラを持っていない彼に、今のわたしは視えない。
 でも、そんなのおかまいなしに、彼の手にすがりつく。
 彼の手を握ることができなくても、温度を分けてあげたくて、手を握りしめる。

「大丈夫……?」

 七海くんは、ハッと目を見開いた。

「……見た?」

「大丈夫なの? 大丈夫じゃないよね。わたしが話聞くから、だから──」

 七海くんの瞳が絶望に染まる。

「ごめん」

 立ち上がった彼の手は、するりと、いとも簡単に、わたしの手を振り解いた。
 その手で彼は口を覆い、よろよろとふらつきながら生物室を出て行ってしまった。

 「今日は公園行かない」そんな言葉を残して。