◆ 第六章 後宮の闇を解く



 器の中にお湯が注がれる。丸い茶葉がゆっくりと広がり、中から飛び出した可愛らしい花がまるで咲いているように見えた。

「うわあ、すごい! 可愛いわ」

蓮妃が興奮気味に器の中を見つめ、すんと鼻から息を吸い込む。

「それに、とてもいい香り」
「お気に召していただけて嬉しく思います。実家から取り寄せたものなのです。おふたりをご招待した甲斐があります」

 今日の茶話会の主宰である蘭妃はにっこりと微笑んだ。

(皇都にはいろんなお茶があるのね)

 玲燕もまた、初めて見るその飲み物を興味深げに見つめる。工芸茶というらしいが、田舎である東明では飲んだことはおろか、存在すら知られていなかったように思う。

「今日は、暖かいですね」

 玲燕は外を眺める。
 まだまだ冷え込む日が多いが、着実に春は近づいてきている。

「もうすぐ梅が咲くかしら?」

 蓮妃も外を見る。

「実家にいる頃は梅の季節になると、いつも両親と梅園を見に行ったの。たくさんの梅の花が咲いていてとても綺麗なのよ」