「……あっ……あの……」


 不思議。


 今の状況。
 たまらない、本当に本当に恐ろしくて。

 それなのに。
 いられない、訊かずには。


「どうして、このようなことまでして来てもらいたいんですか
『白龍』の総長さんに」


 連れ去る、私のことを。
 そうまでして呼び出そうとしている。
『白龍』の総長さんを。

 知りたい、その理由を。
 そう思った。


 というのもあるけれど。
 いけない、訊かなくては。
 そんな気がした、なんとなく。


「……するためだ」


 十数秒の沈黙のあと、北邑(きたむら)さんは静かに口を開いた。


「……?」


 するため?
 何を?


「勝負を」


「……勝負……?」


 一体何の勝負をするのだろう。

 ゲーム?
 クイズ?
 勉強?
 スポーツ?

 浮かんでくるのはそういうものばかり。
 というか、それくらいしかないような気がする。
 他は全く思いつかない。


「『白龍』はさ、
 悔しいけど最強なんだ。
 俺たちはいつも負けてしまう」


 勝負の種類をいろいろと考えていると。
 海翔さんが悔しさを含んだ苦笑いをしながらそう言った。



 やっぱり勝負というのは今思いついた中のどれかなのだろう。

『白龍』というのはチーム名。
『白龍』の総長さんはチームのリーダー。


 北邑さんや海翔さんは『白龍』のチームと争っている。
 ゲームやクイズや勉強やスポーツなどで。
 だけど、いつも負けてしまい悔しい思いをしている。

 だから今回も勝負をするために私のことを連れ去り……。