私は、希望に目を輝かせた。

「凄いよ、学!」

宗弥が、天井に手を伸ばして、ガッツポーズをした。

「よっしゃ!学、これで俺達、もうコワイもんねぇよ!ナイス!」

学が、隣の宗弥を見上げると共に、梨絵は口元を覆った。

宗弥の首元が、ほんのり赤みを帯びてくる。

ーーーーナイス。

気づいた宗弥が、首元を掻きむしった。

「わぁぁぁーーっ!……どうしたらいい!俺、どうなるんだよっ!なぁ!」

気が触れたように叫び、喉元からプレートを、取り出そうと、目を剥いた宗弥に、私は、思わず身体が震えた。

禁止言葉を、連続して発したからだろうか?宗弥の首元は、どんどん赤くなって、小さくピコピコと音が聞こえ始めた。

「死にたくない!助けてくれよ!まだ…生きたいんだ!」

「宗弥、落ち着けっ!」 

学が、取り乱す宗弥の肩を強く掴んだ。


ーーーーその時だった。

「大丈夫かい?平井君……」

曲がり角から、音もなく、現れたのは、社会科教師の田所だった。

私は、思わず田所に駆け寄っていた。

「先生!宗弥を助けてください!」 

「お願いします!」

学も、すぐさま頭を下げた。

宗弥は、首元を押さえながら、涙を流して田所に縋った。

「先生!俺、死なないよな?大丈夫だよな?」

「大丈夫、僕に任せて。さぁ、君たちは教室へ戻るんだ」

田所は、蛇のような目つきで、こちらを向かって不気味に微笑むと、取り乱す宗弥を、引きずるように、連れて行く。

「宗弥……」

私は、田所と宗弥の後ろ姿を、小さくなるまで見送った。

「戻ろう、梨絵……」

学の声色に、私も全てを悟る。

もう、宗弥は戻ってこないだろう。今までの生徒と同じように。

私達は、目を合わせると、強い決意を胸に、教室へと戻った。