一瞬、誰も声が出てこなかった。

「……嘘だろ……」

絞り出すように声を発したのは、宗弥だった。

そこには何百、何千と、その前のページの禁止言葉を発した、人間の氏名と、発した言葉が、ずらりと並ぶ。

「悠平の言ってた通りだ、日々増える禁止言葉を、俺達人間に、記憶できる訳が……」

頭を抱えた学を横目に、私は、大きな声を上げた。
「あ!悠平!」

三人同時に、『上原悠平』その名前に釘付けになる。 

悠平が気づかず、発してしまった禁止言葉は……?

ーーーー『(なに)


『な』の音を含む『なに』だ。

確かにあの時、悠平は言っていた。

『何でもいい、俺達だけの言葉を作るんだ』

「クソったれ!そん……ことありかよ」

宗弥が、床を拳で叩いた。

「俺達、人間は、言葉を発する時、脳が勝手に考えて伝えたいことを優先して、会話をしてるんだ。いちいち、ひらが……を思い浮かべてから会話できるもんか」

「……どうしたら、悠平の言ってた、言葉作れる?」

ーーーー私が、宗弥と学に訊ねた時だった。

図書館の扉の掛けておいた鍵が、カチャリと開けられる。