私は、すぐに内側から、図書館の扉のカギを回すと、学と、宗弥が入ってきた。

「これ帰りどうすんだよ?」

宗弥の言葉に、学がニヤリと笑うと、ポケットから、ロープを取り出した。

「俺達が先に出て、梨絵が鍵をかける。後から俺達が、梨絵を引っ張りあげる」

「さすがだ」

宗弥が、唇を持ち上げた。

「悠平の言ってた本ってどれ?」

宗弥が、辺りを見渡しながら、奥へと足をすすめていく。私は宗弥の腕を掴んだ。心臓はバクバクと音を立てる。

悠平の最後の言葉。

ーーーー『禁止言葉辞典』に気をつけろ。言葉はもうダメだ。

悠平は、私達に『新しい言葉を作るんだ。何でもいい、俺達だけの俺達だけが通じ合える言葉を』そう、告げた次の日から、学校に来なくなった。

私は、首を捻る。新しい言葉って何だろう。考えても思い浮かぶどころか、訳もわからない。

悠平は、クラスで1番頭が良かった。

『この学校は、おかしい。調べてみる』 

そう言って、悠平は、手製の針金を使った鍵で、出入りを禁じられている、この第一図書館に忍び込み、自分達にさっきの言葉を告げて消えた。

本棚の手前は児童文学、純文学、社会学、哲学……何処にでもあるような本が、埃を被って並んでいる。

「これだ」 

学が、指先した。 

辞書、辞典の列の1番奥の二段目の棚に分厚い本が1番端に置かれて入る。他の辞書、辞典と違って、埃の被りが少ない。

悠平がページを捲った証拠だ。