家に帰れば、尚子が珍しく、ハンバーグを作っていた。

「沙羅ちゃんが遅いから、新しいパパに探しに行ってもらったのよ、どこで何していたの?」

「ノートがなくなったから、駅前の文房具屋に行ってたんだよね、沙羅ちゃん」

私は、今日から尚子の3番目の夫となった、刑事の真澄をちらりと見ながら、
「わざわざ、迎えにきて頂いてすみません」
と小さな声で返事をした。

「いいえ、どう致しまして。市民の安全と可愛い娘の安全を守るのは、俺の使命だからね」 

真澄が人差し指をたてて微笑んだ。真澄がジャケットをかけに寝室へ向かうと、尚子が私に耳打ちする。

「あんな場所、もう行かないでね」

ーーーーあんな場所。

(バレてるんだ)

「あと、沙羅のその口紅、私の方が似合うわ」

なんて事ないような口調と共に満面の笑みで尚子は、笑うと焼き上がったハンバーグを五枚のプレートにそれぞれ乗せていく。

私は、自室に入ると制服から部屋着に着替えた。