4人家族の生活が始まってから、3週間程経った。最近、一也の帰りが遅い。ワザと尚子と俊治に会わないようにの時間を調整しているのだ。我が父親ながら、よく我慢していると思う。
『尚子は、昔から目新しいモノが好きだから』
そう言いながら、自分でコーヒーを淹れ、読書をする父親の後ろ姿は哀愁が漂っていた。
ここ毎週のように、週末になれば、尚子と俊治は、映画のレイトショーをみにいくと行ってそのまま帰っては来なかった。
(イライラする……数少ない女だから、美しい妻だからといって、尚子に言いたい事もいえない父親も、どうせ尚子の身体目当ての俊治も)
学校の帰り、私は、石ころを蹴飛ばしなが、以前、隆介と一緒に来た場所に寄り道をしていた。
このイライラを消化しないと、とても家に帰る気にならなかったからだ。私は、数ヶ月前、何者かによる放火のボヤ騒ぎがあり、その風評被害で閉店したばかりのラブホテルのガラス窓に向かって、思い切り石を投げた。
ガシャンと音がして、窓が粉々に割れる。
「はぁ、スッキリした」
こうやって、見せかけだけの家族も壊してしまえればいいのに。
「器物損壊だよ、現行犯逮捕」
振り返れば、『巡査部長 原山真澄』と印字された警察手帳をこちらに向けながら、スーツ姿の男が立っている。男は、切長の瞳を光らせながら、唇を持ち上げた。
「あ、ごめんなさいっ、もう二度としないから補導しないで」
私は、体を90度に折り曲げて謝罪した。
「しないよ、榎本沙羅ちゃん」
ーーーーえ?
『尚子は、昔から目新しいモノが好きだから』
そう言いながら、自分でコーヒーを淹れ、読書をする父親の後ろ姿は哀愁が漂っていた。
ここ毎週のように、週末になれば、尚子と俊治は、映画のレイトショーをみにいくと行ってそのまま帰っては来なかった。
(イライラする……数少ない女だから、美しい妻だからといって、尚子に言いたい事もいえない父親も、どうせ尚子の身体目当ての俊治も)
学校の帰り、私は、石ころを蹴飛ばしなが、以前、隆介と一緒に来た場所に寄り道をしていた。
このイライラを消化しないと、とても家に帰る気にならなかったからだ。私は、数ヶ月前、何者かによる放火のボヤ騒ぎがあり、その風評被害で閉店したばかりのラブホテルのガラス窓に向かって、思い切り石を投げた。
ガシャンと音がして、窓が粉々に割れる。
「はぁ、スッキリした」
こうやって、見せかけだけの家族も壊してしまえればいいのに。
「器物損壊だよ、現行犯逮捕」
振り返れば、『巡査部長 原山真澄』と印字された警察手帳をこちらに向けながら、スーツ姿の男が立っている。男は、切長の瞳を光らせながら、唇を持ち上げた。
「あ、ごめんなさいっ、もう二度としないから補導しないで」
私は、体を90度に折り曲げて謝罪した。
「しないよ、榎本沙羅ちゃん」
ーーーーえ?