「パパ、許せなかったの、パパ達をちゃんと愛さないママが……」

母のいない家は、何だか明るく見える。私は、笑いを押し殺して涙を流す。

「沙羅は、悪くない。パパ達の為にごめんな」

一也が優しく頭を撫でる。

「今日は、食欲なかったね。明日は、食べやすいリゾットを作るから」

俊治が優しく微笑む。

「沙羅ちゃんは、何も心配しなくていいから。パパ達に任せておけば大丈夫だよ」

真澄が、力強く肩を抱く。

私は、涙を浮かべながら、笑って見せた。

「ありがとう、パパ達を愛してる」



2日後、尚子が失踪した事件が、新聞の片隅に小さく掲載されていた。一生解決されることのない失踪事件になるだろう。

私は、父親達が眠った後、部屋に飾ってある三人の頃の家族写真を見ながら、微笑んだ。

「ママ、安心してね。パパ達が私を守ってくれる。ずっと私だけを愛してくれるから」

最高だ。

毎日の体調管理をしてくれ、何あればすぐに治療してくれる内科医の一也パパ。牛から人間の遺体まで切り刻むことができ、何でも調理してしまう、料理家の俊治パパ。警視庁捜査一課の現役刑事で、これからもあらゆる犯罪から私の身を守り、罪を隠匿してくれる真澄パパ。

この母親譲りの美貌のおかげで、私の未来の旦那様たちもきっと私を大切にして、愛してくれるだろう。

「弁護士もいいな、何かあった時、弁護してもらえるし。あと消防士もいいわね。強靭な肉体でいつも私を守ってくれる。あとは、お金持ちの、どこかの会社の御曹司がいれば、私は、パパ達と旦那様達でこの世の誰もが羨む全てを手に入れる事ができるのね」

私は、勝ち誇った笑みを、母親の写真に向けた。