元々霊力が桁外れに強かった当主のワンマンで成り立っていた三鈴(みすず)家では、反対するものは即座に殺され、反対しないものは有無を言わさず、時司(ときつかさ)家への服従をせまったという。

ここ数年良好な主従関係であった時司家と三鈴家だが、最近ズレが生じているように思える件が都内を中心に増えている。

そのこともあり、分家関係者から直接話を聞くべく、多忙な合間を縫って御津宮家本家の当主である志築が出向いたのだ。

影縫師は、ヒトの闇を「生きていない」もう「この世のものではないもの」に縫いつけ、影を与え支配する。  

つまり霊と呼ばれるモノに、人間の心闇を縫いつけ実体化させ『影』として、霊の願いや生前叶えたかったものを叶えさせる。 

見返りは至ってシンプル、寿命だ。

『影』の目的が達成されれば、その成果に応じて『(たま)』として、寿命が返還される。

影縫師の霊力が強力であればあるほど『影』も強力となる。影縫師と『影』の主従関係は絶対的であり、影が目的を達成するか、何かしたらの条件を満たして満足するか、いずれにせよ、『影』が自身の欲を満たした時点で『珠』となる。

『珠』は色々な政治的駆け引き等に使われている。末期がんを公表していた大物政治家が奇跡の完治を果たしたなど等というニュースの大半が、影縫師と政治家との関係を指し示す典型的な『珠』の使われ方だ。