(見た目も特別綺麗ではないし、何か特技があるわけでもない……だから、何百人も女性がいるような後宮で、皇帝の世継ぎを生むなんて大それた夢は描いていない。そもそも男色家だと言われているし……)

 地方高官の娘だったのに、義母の支配下にあった生家では貧相な暮らしを送ってきた。
 それに比べたら、三食食べることが出来て、寝食だって安全にできるのだ。
 
 私は本当に恵まれている。

 後宮では、趣味の読書がたくさん出来てとても幸せなのだ。
 それに、もしかしたら――。

(白ちゃん)

 今はまだ後宮で出会ったことはないけれど、幼馴染の少女との再会だってあり得るのだ。
 とにかく無難に妃達の機嫌をとって、いじめられないようにしながら、書物を読んで生きていけたらそれで良いのだ。

 私本人は、そう思っていたのだけれど――これから先、予想外の出来事が待ち受けているのだった。