「困った時だけ、助けてって言ってくるくせに、自分の問題だからとか訳わかんねーだろ!」

これ以上言ったら駄目だと頭では分かっているのに止まらない。

「俺はお前の何だよ!保護者じゃねぇんだからさ、毎回毎回、迷惑かけられてる、俺の身にもなれよな!」

「……ごめん、なさい」

そこまで言ってようやく俺は、自身の口元を覆った。思ってもないことばかりを並べ立てて、気分は最悪だ。

砂月は、俯いてて顔は見えない。肩が僅かに震えている。多分泣いてるだろう。

俺は見ない振りをして、握りしめていた手首を乱暴に離した。 

「勝手にしろよ」

後に引けなくなった俺は、砂月に背を向けて坂道を下り始める。

ーーーーその時だった。

こちらに向かって長身の男が走ってくる。

「え、駿介?」

「おい、彰、お前ら遅すぎ、てゆーか桃が居なくなった」

「え?先輩と一緒だっただろ?」

「先輩が、トイレ行った隙に居なくなったらしいんだよ、ったく、ガキは」

だから嫌なんだよ、と駿介が吐き捨てた。

「先輩は?」

「さっき中広場に血相かえて来て、いま愛子と一緒に川の方見に行った。俺はアスレチックの方見てくるわ、そのあと一度テント戻る。ほんと、なんだよっ」

舌打ちをしながらも、ここまで桃を探して一生懸命走ってきたのだろう、駿介の額に汗が噴き出していた。