砂月は、俺から目を逸らすと、再び坂道を下ろうとする。明らかにおかしい。砂月が俺の目を見るのを明らかに嫌がったのがわかった。

「砂月帰るぞ」

俺は追いかけて、砂月の腕を強く引いた。

「やだ!」

砂月の細い腕が、力一杯拒絶する。

「砂月!」 

「……帰らない、皆んなに言わないで」

「言うだろ!おかしいだろ、砂月が目眩とか」

砂月は見た目よりも、人並みに健康だし体力もある。小さい時から、すぐ熱を出すのはいつも俺だった。

「彰大丈夫だから、お願いだから」

砂月が俺とようやく目を合わせると、懇願するように俺を見た。

「じゃあ理由言えよ……何があった?そんな目眩起こすほど」

昨日、一昨日と砂月の様子を振り返る。いつものように砂月の家で、夕飯を一緒に食べて、夜は、俺の部屋で少しパズルをしたりした程度で、いつも通りの砂月だった。

いや、俺の前でいつもと同じようにしてただけ、なのだろうか。

振り解かれないように、砂月の手首を強く握りしめた。

「……私の問題だから。あ……彰にも、言いたくない」

自分の眉に皺ができるのが分かった。

「ふざけんなよ!」

砂月に、大声で怒鳴ったのは初めてだった。