「来れて、良かったな」

平坦な道から、少しずつアップダウンしながら緩い坂道に入る。

「うん、凄く楽しい」

俺と同じ山育ちの砂月が、跳ねるように俺の半歩後ろを駆けてくる。

緩い坂道を下っていくと左手にアスレチック、右奥に墓地が見えた。

(あれか……藤野の言ってた墓地) 

「砂月、右奥だけは行くなよ」
「うん、わかってる」

目線だけ、墓地に向けると砂月が深く頷く。

「川もだぞ」
「わかってる」

ぷっと砂月が笑う。

「なんだよ?」

「お父さんみたい」  

「誰が、お父さんだよ!」 

(おいおい、俺はそんな感じで見られてんのか?マジでへこむだろ)

「彰、先行くねー」

ガシガシと頭を掻く俺を見て、砂月が笑いながら、緩い坂道を下った、その時だった。 

ぐらりと身体を、不自然に左に傾けると、そのまま砂月が、地面へと吸い込まれるようにバランスを崩した。

「砂月っ!」

咄嗟に砂月のを肩を掴んだ。

「わっ、だ、大丈夫」

何度か瞬きをしながら、反射的に砂月が、大丈夫だと口にする。

「何が大丈夫だよ!」

「ちょっと、……目眩がしただけだから」

「砂月?目眩って、体調悪いのに合宿来たのかよ」

「大したことない。少し寝不足なのと……久しぶりにちょっと走ったせいかも」

「そんなわけないだろ?」