夏も終わりのキャンプ場は、思っていたよりも人が少なく、家族連れ数組と、少し離れたところに大学生のグループが来ている程度だ。

人が少ない方がトレーニングもしやすいし、砂月が、余分な気を使わなくて済むので、好都合だった。

なんせ通りすがりの人の飼っていたインコが、死んだ云々の会話から、インコのぴーちゃんに憑かれた前科もある。

俺たちは、各々持ってきた昼食を食べ終わると午後のトレーニングを始めた。
俺と砂月、駿介と愛子、谷口先輩と桃の3ペアに分かれて、それぞれ別ルートで、中合流地点の、中広場を目指すというものだ。

「砂月、頑張ってるじゃん」 

砂月は、足元にふんぞり返っているコガネムシをさっと跨ぐと、

「全然大丈夫!これで六匹目だもん」 
と胸を張った。

「さっきは蟻が、ダンゴムシ運んでたけど、みた?」

「彰!思い出させないでよ!ばか」

口を尖らせて、砂月が抗議する。

「小さい時はさ、一日中さ、俺、虫ばっか祓ってたよな」 

「え?そうだっけ?」

砂月が首を傾げた。

「砂月が、急に木に登ってミンミン鳴いたり、バッタみたいに四本脚で飛んでさ」

「やめてよーせっかく忘れてるのに」

思い出して、声を出してケタケタ笑う俺に、砂月が、眉に皺を寄せて俺を睨んだ。

「どっちが勝ったんだっけな?バッタとセミの祓いの一騎打ち」

「もう!どっちでもいいよ!ほらっ、彰スピードあげて」

不貞腐れた砂月が、ストップウォッチ片手に俺の尻を叩いた。