「かわいー!私は愛子だよ」

「お目め大きい、可愛いね。私は砂月。よろしくね」

 女子達の黄色い可愛い合戦をよそに、駿介が、おいおい小猿連れで合宿なんて、大丈夫かよと悪態をついた。

「俺の妹だ、宜しく頼む。うちは共働きでな、お袋も急な仕事が入って、俺しか面倒みれなくなってしまって。悪いと思いつつも連れてこさせてもらった。見ての通り、桃は愛らしい!金髪も茶髪も絶対に!手を出すなよ!」

 本気か冗談かわからない口調で、ニヤリと笑いながら、俺達は、ギョロ目で睨まれる。

 おいおい、ガキに興味ねぇよと俺の耳元で駿介が吐き捨てた。

「そこの茶色のヤツ!名前教えなさい!」  

桃が、ずいっとこちらにやってくると、小さな人差し指が駿介に向けられる。

「なんだよ。名前?……めんどくさいな。駿介」  

 その小さな人差し指は、黙って俺に向きが変えられる

「え、俺?彰だけど」 

「茶色の猿も金色の猿もわたくしが、宜しくしてあげる」

勝ち誇ったように桃が、腰に両手を当てた。

「すんげー生意気だな……」

「だから俺は嫌いなんだよ」

「わたくしも嫌いよ」

「おい、さっき俺らを猿って言ったよな。お前こそ小猿そのものだろ。くそ生意気だな」

駿介が、桃の首根っこをグイッと捕まえた時だった。