(念ずればなんとかだな……)

俺は、邪な気持ちのまま、浴衣の姿の砂月のうなじに唇を寄せて、俺は祓いの言葉を唱える。

「いたいのいたいのとんでいけ」
「いたいのいたいの飛んで逝け」

砂月の両手が、俺の背中に、ぎゅっと回されていたのがゆっくりと緩められる。

緩められたということは、もう祓えたという合図だけど、砂月が何も言わないから、俺はそのまま、砂月を抱きしめていた。

このままずっとこうしていたい。明日も明後日も、来年も、10年後も。砂月とずっとずっと一緒に居たい。いつも隣にいて守ってやりたい。

「来年も来ような」 

耳元で囁いた俺の言葉に、砂月が小さく頷いて、俺は、今まで一緒に来た夏祭りで一番幸せだった。