「ごめん、歩くの速かったよな」

頭を掻きながらも、砂月の方を、ちゃんと見れない俺に、砂月が、泣きそうな顔をして、俺をみあげた。

「え?どした、砂月?」

砂月は、大きな瞳を潤ませると、消えいるような声で呟いた。

「……私と一緒にいくの……嫌だった?」 

「えっ?」

思わず、大きな声がでた。砂月が、なぜ泣きそうになっているのかも、砂月がなぜ、俺が砂月と一緒に行きたくないと思ったのかも、検討がつかない。

「な、何でそうなるんだよ?」

砂月の大きな瞳からは、もう涙が溢れそうだ。

「だって……」

「だって?」

「……彰、私の浴衣姿見ても、興味無さそうだし、先に歩いて行っちゃうし、私と行くの……嫌だったかなって……」

砂月の瞳から、ついに溢れた涙は、あっという間に2つ3つと増えていく。

「ばか、違っ……」

(砂月が可愛いすぎて、見られないんだよっ)

俺は、ポケットに入れておいた、ハンカチで砂月の涙を拭いながら、唇を湿らせた。

「彰……行きたくないなら」

「砂月と行くの、どんだけ楽しみにしてたと思ってんのっ」
 
「え?」

俺の言葉に、砂月の瞳がまんまるになる。