「あー。マジで緊張する」

俺は、姿見の前で自身の甚平姿を、映しながら、隣に並ぶ砂月を想像する。

夏休みのお盆前、俺は、毎年この日が、楽しみであり、そして物凄く緊張する。

今日は、年に一度の春宮神社で夏祭りが開かれる日だ。小さな頃から、俺と砂月は毎年、この夏祭りに一緒に来ていた。

何度も部屋の時計を確認しながら、待ち合わせの時間が迫り、俺は5分前に家をでた。

「彰、お待たせ」

カロコロと下駄を鳴らしながら、紺地に向日葵柄の浴衣に、オレンジの帯を絞めた砂月が、玄関から出てくる。

「どうかな?」

砂月は俺の前でくるりと一回りすると、恥ずかしそうに俺を見上げた。いつもは下ろしている長いふわふわの髪の毛も、綺麗に一纏めにしてあり、蝶々の髪留めがついている。

「いいんじゃねえの……」

(めっちゃくちゃ可愛い……)

俺は、あまりの可愛さに、そっけなく返事する。

砂月の見慣れない浴衣姿と、いつもは見えないうなじに、俺は心臓がはち切れそうで、とても直視できない。

甚平のポケットに、両手を突っ込んで、俺は、雪駄を鳴らしながら、砂月より、少し前を歩いていくと、カロコロと少し後ろから、砂月の下駄の音が聞こえてくる。

「待ってよ、彰……」

か細い声に振り返れば、砂月との距離が開いていることに気づいて、俺は慌てて歩みを止めた。