「砂月、行くだろ?」

駿介の言葉に、砂月が反応して、俺を見た。

「いいの?……彰、いい?」

「……砂月、わかってんのかよ?」

「気をつけるから。絶対、迷惑かけないようにするから」

ーーーー迷惑とかじゃない。

やっぱりダメだと言ってやりたがったが、手を合わせて祈るように、こちらを期待の(まなこ)で見ている砂月に、これ以上、否定する言葉が出てこなかった。

(俺だって、好き好んで砂月を泣かせたい訳じゃないんだよっ)

「やったぁ。愛子、私楽しみ!」

俺が何も言わないのを、肯定と受け取った砂月が、くしゅっと笑う。

「良かったね、砂月。あたしも側にいるからね」

「うん!愛子大好きっ」

頭を撫でられた砂月が、愛子にぴょんと抱きついた。

大好きって愛子に言うのかよ。

俺の小さな嫉妬を慰めるかの様に、駿介が口角を上げながら、コツンと椅子裏を蹴った。

「何だかよくわからないが、一年は全員参加ってことだな!いやーめでたしめでたし!ガハハハッ」

谷口先輩の底なしの明るさと馬鹿でかい声に、俺は、初めて救われたと思った。