砂月の体温が、俺にじんわり伝染してきて、心地いい。

たぬき池のトレーニングの後ということもあり、思わず目を瞑りそうになった時だった。

こつんと砂月の頭が、俺の胸元に当たって身体が預けられる。

そっと腕の中を見れば、長い睫毛を閉じて眠ってしまった砂月が居た。

俺は、起こさないように、砂月をベッドに寝かせると、布団をかけた。砂月から離れようとした時、スウェットの裾が僅かに引っ張られる。

「え?」

見れば、砂月の小さな掌が、俺のスウェットの裾を握り締めながら、眠っている。

俺の心臓が飛び出るくらいに跳ねた。そっと、握られている掌を解こうとするが、砂月が、俺が何処にも行かないように固く握りしめている。

(やば……)

思わず、俺は口元を覆う。砂月は無意識とはいえ、こんなことされたら、帰るに帰れない上に、襲ってしまいそうになる。

「えっと……添い寝して、雷落ち着いたら、帰るから……」

言葉に出しておかないと、とても自分が保てそうもない。俺は、砂月に捕まれたスウェットをそのままに、砂月の隣に寝転んだ。

甘い香りは、隣からますます強く鼻をかすめる上に、安心しきった寝顔を見せながら、静かな呼吸音が部屋の静寂に響く。

高鳴る鼓動のまま、そっと、砂月の頬に触れた。

「……ん……あき……ら」 

砂月が、小さく俺の名前を呼ぶ。

「好きだよ……俺が、ずっと守ってやるから」

砂月の額に唇を寄せて、抱き寄せる。

そのまま、互いの体温を伝染し合ううちに、俺の意識も雨音と共に、深く沈んでいった。