ーーーー金曜の午後8時。

俺たちは、ジャージ姿で歓迎会という名の肝試し兼、筋力トレーニングに、たぬき池に集合していた。

「なぁ、彰、マジで大丈夫だろうな?」

小声で俺に囁く駿介に、俺は唇を持ち上げた。

「父さんにも確認してきたし、神札も、持ってきたから、なんせ、今日は俺も悪霊祓えるからな」

俺が、指先した先を駿介が目を凝らす。

「暗くてよく見えないけど、確かに池に何か建ってるな」

「父さんの祓いは間違いないからさ」

「あっそ、ならいいけど……」

「何?藤野が心配?」

「いや、俺は砂月が心配」

ワザと聞いた俺に、駿介は、すぐ様そういうと、その視線はすぐに愛子へと向けられる。

(どう見たって、駿介が心配してんのは藤野だ。マジで何で俺、今まで気づかなかったんだろ……)

自分の鈍感さに、ほとほと呆れる。

「彰、谷口先輩遅いね」

砂月が、こちらを振り返って、長い髪を夜風に揺らす。そのたびに甘い匂いがして、俺の鼓動は既に何回も跳ねている。

「あー……まあ、来るだろ、あんな張り切ってたし」

(こんな砂月おぶって、俺は、平常心保てんのかな)

俺は、ポケットに両手を突っ込んで、砂月から視線を逸らした。