「彰……大切な人は、しっかり守ってやれ」

俺は大きく頷いていた。

「父さん……俺は、何があっても砂月を守るし……色々な事を……絶対、《《あきら》》めないようにするから」

俺は、河野さんから聞いた、自分の名前の由来をあえて口にした。

父さんにも、いつか、病気とはいえ、守りきれなかった母さんのことを、乗り越えてほしいから。

大切な人のために、乗り越えることを諦めてほしくないから。

父の切長の瞳が大きく見開かれた。

「彰、お前変わったな……砂月ちゃんのおかげだな」

「うん、砂月が居なかったら、俺、全然ダメだからさ」

俺が立ち上がり、おやすみ、と言って扉を閉める瞬間、小さく、おやすみ、と久々に父の挨拶が返ってきたのが、聞こえた。