砂月の家で、いつものように夜ご飯を、食べさせてもらい、シャワーを浴びた俺は、ベッドに転がっていた。 

部屋の時計を見れば、22時だ。

ぶら下がっているカレンダーを見れば、今日は、○印が付いている。父が、俺が居ない時に、俺の部屋のカレンダーに月に数回帰ってくる日を書き込むのだ。

(そろそろだよな……)

玄関の扉が、ガチャリと開く音がして、俺は一階へのリビングへと続く階段を降りた。

「なんだ彰、まだ起きてたのか」

斎服に身を包んだままの父が、疲れた顔で面倒くさげに口を開いた。

「てゆうかさ、もうちょいマメに帰れば?洗濯物ヤバいじゃん」 

ゴミ袋に乱雑に詰め込まれた洗濯物を指差して、俺はため息を吐き出した。

「うるさいな。シャワーを浴びるから……ちょっと待ってろ」 

思わず目を見張った俺を見ながら、父は僅かだけ唇を持ち上げた。

(お見通しかよ……)

俺は頷くと、冷凍庫から、白ごはんをチンして、お湯を沸かし、お茶漬けの素を戸棚から、一袋出した。

多分、夕ご飯は食べてないはずだから。

いつからだろうか。父が、この家にほとんど、帰って来なくなったのは。

理由は、わかってるから、俺は、ちゃんと父に聞いたことはない。