「え?何?どうかした?」

愛子は、不思議そうに俺を見ている。

「え?ちょ、待って。駿介は、そのっ、藤野のことを?ってこと?」

「あ、えっ!」

俺の反応を見て、愛子の頬があっという間に真っ赤に染まる。

「ごめん、忘れて」

「いや、無理だろ!駿介は、砂月が好きなんじゃないのかよ?」

「あ、それは……えっと」

言いにくそうに、愛子は、飲み終わった苺ミルクの紙パックで顔を隠した。

「それは多分、……あたしに、その、やきもち妬いて欲しいから、だと、思う。……もう小、中と、卒業式に二回、……その、断ってるから」

「……嘘だろ」

俺は、ポカンと口を開けた。ものすごく間抜けな顔をしてたと思う。

そう言われれば、確かに、駿介は、ハッキリと砂月が好きだとは言ってなかったように思う。

すげぇ、回りくどい口説き方じゃねえか?

「……てゆうか、藤野も、好きなのか?」

苺ミルクから、見え隠れする愛子の頬が真っ赤だ。

「全然好きじゃない。タイプじゃない。ありえない」

「俺には、全部逆に聞こえるけどな、素直じゃねーな」

「春宮彰に、言われたくない」

「俺だって、簡単に言えるかよっ」

素直に砂月に言えるなら、とっくの昔に言ってる。

「恋って何だろうね」 

「だな……」

甘くて酸っぱい、恋の味とはよく言ったもんだ。

次は、キンキンに冷えた苺ミルクを、もう一度だけ飲んでみてもいいのかも知れないと、俺は思った。