翌日、砂月を自転車に乗せて登校した俺は、教室に入って、一瞬、我が目を疑った。

「嘘だろ……」

俺の机に鎮座している、可愛らしい苺マークの、淡いピンク色のパッケージ。

俺がどんなに喉が渇いていても、たとえ密かに好きで飲みたかったとしても、絶対に買わないであろう、女子力百パーセントの飲み物が、机の、ど真ん中に置いてある。

「かーわいっ」

遅れて教室に入ってきた駿介が、早速、俺を揶揄う。

「ちがっ、俺のじゃねぇ!」

いつのまにか、苺ミルクを握りしめてることに気づいて、俺は慌てて手を離す。

「いいっていいって。やっぱお前女子だな。彰ならギリ有りだよ」

「ねぇよ!こっち見んなっ!」

(誰だよ、こんな小っ恥ずかしいモノ置いたのは!)

封が開いてないことを確認して、砂月の席へ向かって立ち上がろうとした時だった。

ガラッと勢いよく開かれた扉から、聞き慣れた声がする。

「彰!お前は苺ミルクが好物だったのか?!
可愛いじゃないか!ガハハハッ」

谷口先輩に、ガシッと肩を掴まれ、俺の苺ミルク好き情報がデカい声と共に、勝手に教室中にばら撒かれる。

あちらこちらでクスクスッと声がした。

(おいゴリ……最悪だろ)