「あの……」

「何?」

「私……憑かれた時どんな感じだった?」

ほとんど記憶はないものの、今まで憑かれた感じと違って、自分そのものを丸ごと持っていかれてしまうような恐怖感だけが残っている。

彰が一瞬、宙を見ると、口籠った。

「……怖くなかった?」

彰は、どうして、なんでもわかっちゃうんだろう。ぐっと堪えたけど、一粒だけ涙は転がった。

「怖かったよな、ごめんな……」

ご馳走様と手を合わせながら、彰が申し訳なさそうにしながら立ち上がる。

「彰のせいじゃないもん……私がいけなかったの、もっと気をつけなきゃいけないのに……」

彰は、少しだけ震えた声の私の頭をポンと撫でると、涙を、指先で掬った。

「次は、絶対守ってやるからな」

力強くそう答えた、彰の顔を見上げて、私は思わず、クスッと笑った。

「何だよ?」

「彰、じっとしてて」

私は手を伸ばすと、彰の口元のご飯粒を摘むと口に入れた。

「砂月、ありがと」

彰は、そう言うと、頭をガシガシ掻きながら、恥ずかしそうにそっぽを向いた。

「こちらこそ、彰、ありがとう」

私達は、視線を合わせると、にっこり笑いあった。