「重くねーよ、誰が保健室まで運んだと思ってんの」

彰は、私の鞄を取り上げると、自分のと一緒に前かごに放り込んだ。

「砂月」

名前を呼ばれて、観念した私は、彰の自転車の後ろに跨った。

どこをどう持とうか迷ってるうちに、彰の手が伸びて、彰のお腹の方へと両腕が回される。

「わ、彰っ」

「何だよ?」

振り返って、彰の顔が近くて、顔があっという間に熱くなる。

「しっかり捕まってろよ」

「う、ん」

彰は、顔が赤くなってる私を気にした様子もなく、ゆっくりと漕ぎ始めた。

彰の金髪が、月明かりに照らされて、お星様みたいだ。彰の背中がいつもより大きく、頼もしく見える。

こんなに彰の近くにいるのに、『好きだよ』の4文字が、どうして素直に言えないんだろう。

規則的にゆれる自転車が心地よくて、彰の背中からは、あったかいお日様の匂いがする。私は彰の背中にこつんと額を当てると、とくんとくんと高鳴る胸を抑えるように、彰に回した両腕に、ぎゅっと力をこめた。