「彰っ、大丈夫だから」
「絶対ダメだかんな、早く乗れ」
保健室で目を覚ました私は、憑かれた記憶は、ほとんどなくて、彰達から聞いて、正直、驚いた。
用具置き場にピストルを片付けて、お札を見かけたところまでは覚えている。そこから、意識が、誰かに跳ね除けられたみたいに、遠ざかって記憶がない。
私のベッド脇で、泣いてる愛子を慰めて、駿介に強引に連れられて帰る愛子を見送ってから、自転車置き場で、彰との押し問答が続いていた。
「何回も言わせんな!ダメだ」
「だ、大丈夫。自転車位漕げるよ」
彰は、頑なに、私が自転車に乗ることを許してくれない。
「もう、元気だもん」
力こぶを見せながらアピールしても彰の大きな瞳は、きゅっと細められたままだ。
「砂月っ、俺がどんだけ心配したと思ってんだよっ、さっさと乗れ!」
彰は口を尖らせて、自転車に跨ったまま、私に後ろに乗るように目で合図する。
「お、重いから……」
彰の後ろに乗って帰るなんて、心臓が跳ね上がって家まで、とても持ちそうもない。