いつの間にか日が暮れ始めて、オレンジ色が校舎の壁を覆って、運動場は本日の役目を終え、ただ静かに夜の翳りを待っていた。

下足ホールを突っ切って、食堂手前の古い自動販売機が、数台並んだ真横のベンチに駿介が長い足を組みながら座った。

俺は、狭い通路を挟んだ反対側のベンチに同じく腰掛けた。古く、脚が均等でないのか、座るとガタっと揺れた。

「驚いただろ?」

「まあ」

駿介の実家のこと、愛子が、あんな風に取り乱して泣いたこと。

「どっちも驚いた」 

「まあ、俺の家のことは知ってるの愛子くらいだからな。ちなみに俺は知ってたよ、お前が、春宮神社の跡取り息子ってな」 

「え?」

「世間は狭いってな、春宮ってその辺に転がってる苗字じゃないし、俺らの業界じゃ春宮っていえば春宮神社しかないじゃん。お前は知らないかもしれないけど、教会団体の役員会という名の情報交換会っていうの?そんな集まりに親父と行った時、春宮家に一人息子がいるって聞いたことあったから、お前だろうなってすぐ分かった」

下唇を舌で湿らせると、駿介は言葉を続けた。