ーーーーそうか!コイツはただの霊じゃない!今まで、祓えた霊は、迷える善人の霊ばかりだった。

コイツは違う、コイツは、悪霊ーーーー。

「彰、大丈夫か?」

後ろから投げられた声のぬしは、すぐにわかった。

「来んな、駿介、砂月……じゃない」

「わかってるよ、そんなこと」

思わず、俺は振り返って駿介を見た。

駿介は、躊躇なく砂月の前までいくと、胸元からキラリと光るものを見せた。

砂月が、怯えた様子で一歩下がる。

「大丈夫だよ、砂月、すぐ祓うから」

「駿介……何言って……」

ーーーー祓う……?駿介が言ったのか?

「彰、怒んなよ」

そう言って、駿介は、右手をの人差し指と中指、親指の三本の指を重ねた。

左手で、駿介を見ながら震える砂月の両手を束ねると、グイと壁に押し付ける。

「父と子と精霊の御名において、我の願いを聞き給え、アーメン」

駿介は、自身の額、胸、左肩、右肩の順に十字を切り、最後に砂月の額にキスを落とした。

砂月は、一瞬で意識を失い、崩れるように倒れ込んだ。

「砂月!砂月!」

俺は、駿介の腕の中から、砂月を奪い取る様にして抱き抱えた。長い睫毛はぴたりと閉じられ、ぐったりとしている。