「聞いたことないか?首吊りの話」

ーーーー(首吊り?)

「ああ、あの噂ですか?私、何度も用具置き場一人で行ってますけど、何もないですけど?」

俺はなんだか嫌な予感がした。

「首吊りの噂って何?」

「ああ、随分昔にあそこで首吊り自殺した生徒がいるらしくて、未だにお札が、貼ってあんの。てゆーか、その自殺自体も結局噂の域でないし、お札だって、開運だとか何とか言う先輩もいるし、要はよくある学校に纏わる噂話よ」

愛子が淡々と俺に話した。俺は一瞬頭が真っ白になりそうになった。

「しかしな、砂月くんは可愛いからな、一人で大丈夫かな、幽霊も嫉妬する、なんてな」

ガハハハと笑った谷口先輩を背に俺は、走り出していた。

ーーーー砂月!!

校舎裏の一番奥に設置してある、プレハブ小屋まで全速力で向かう。

「用具置き場」と扉の小窓に黒のマジックで乱雑に書いてあるのを確認して、ドアノブに手を掛けた。

扉を開けば、電灯のない用具置き場は、扉から入る光と風で仄暗い暗闇の中、細かい粒子のような埃が舞い上がる。

やけに静かな空間なか違和感を感じて、俺の呼吸は、急激に加速する。 

「砂月?」

俺は、唇を噛み締めた。

砂月は、お札を貼り付けてある所を、じっと眺めたまま微動だにしない。

ーーーー憑かれた!!

直感でそう思った。砂月の肩を、持って、ぐいとこちらに顔向けた。