一瞬で、固まってた俺は、ぎこちなく言葉を返した。

「……あの、その、友達の子供さんの……名前の由来って?」

「あ、由来ね。どんな困難があっても『あきらめない』ように。どんな夢や目標でもあきらめなればきっと叶うって。そんな人になって欲しい、そんな人生が、待っていて欲しいって言ってたわ」

素敵ね、と河野さんが優しく微笑んだ。

ーーーー自分の名前の由来なんて知らなかった。

多分、父さんは知ってるんだろうけど、母さんが亡くなってから、母さんの話を一切しなくなったから、俺も母さんの話しを父さんに聞いた事がなかった。 

『あきら』めないようにか……。

何だよ、立派な名前付けて期待してんじゃねーよ。名前負けしそうじゃん。

捻くれてる俺は、一瞬そんな事思ったけど、心の奥が、あったかくなった。母さんが、生まれて初めのプレゼントに、そんな想いを込めてくれてたんだって、単純に嬉しかった。

母さんか……。もう長いこと会って無い。二度と会えない。

当たり前だけど死んだら、もう永遠に会えないんだ。俺も、砂月も。