砂月と、玄関で待ち合わせして、並んで自転車を漕いですぐだった。

「彰……昨日は、本当、寝ちゃってごめんね。ベッドも借りちゃったし……」

砂月が、恥ずかしそうに、大きなあくびをしている俺を見た。

「彰、カーペットじゃ、熟睡できなかったよね」

「違っ……」 

「え?」

(砂月の寝顔と呼吸音に、ドキドキして朝まで寝れなかったなんて、言えるかよっ)

「……今日から陸上部だなと思ってたら、……ちょっと寝るの遅くなっただけで、砂月のせいじゃねぇし」

「ありがとう」

砂月はクスッと笑うと、ふわりと髪を靡かせた。

「谷口先輩、楽しみにしてるだろうね」

「だろうな。鼻息荒く駆けてくるのが目に浮かぶ」

不貞腐れた顔の俺を見ながら、砂月が笑う。