「彰、着替えたいから、部屋帰るの手伝ってくれる?」

「あ、そだな。了解」

行きは、彰に、引き入れてもらう側だから安心だけど、帰りは別だ。

彰が、出窓から、私の部屋に一人で飛び移って、その後、私を彰の部屋から、手を繋いで引っぱり戻すのが、お決まりのパターンだった。

もう朝だし、玄関から入っても構わないのだけれど、私は彰に手を引かれたかったから。そんなこと恥ずかしくて、一度も言えたことないけど。

彰は、私を何なく自室に戻すと、私の自室の出窓の桟に足をかけて振り向いた。 

「また後でな、今日は、玄関で待っててくれて構わないし」 

窓辺から差し込む朝日で、彰の髪までお日様色に揺れる。

「うん」

私は、彰が窓から自室にもどるのを見届けて、手を振ってカーテンを閉めた。

部屋の中に少しだけ彰の匂いがする。今別れたばかりなのに、もう会いたいと思う気持ちを抑えながら、私は制服に着替え始めた。