お布団から、すごくいい匂いがする。お日様みたいな男の子の匂い……。よく知ってる安心する匂い……。窓辺からは朝日が差し込んでいる。

私はゆっくり瞳を開けて、その朝の光に飛び起きた。

「え?私……寝ちゃったんだ」 

ベッド下に目をやれば、彰が体を一つで、丸くなって眠っている。

彰の寝顔は小さな時から全然変わらない。私はベッドからそっとおりると、彰の頬に手で触れていた。

「彰……いつもありがとう………」

私より体温の高い彰は、頬も体温が高い。寝顔はまるで小さな子供みたいだ。

いつからだろう。私よりも背も高くなって、私をベッドまで軽々運べるくらいに男の人になったのは。

「……大好き」

いつかちゃんと、彰に伝えられるだろうか。幼なじみとしては勿論、1人の男の人として、彰が大好きなことを……。

小さく溜息を吐き出してから、私は彰の肩に手を置いた。

「彰、起きて」

私は彰をそっとゆする。

「……え?……」

慌てて起き上がった彰と至近距離で目があって、私は咄嗟に体を引いた。

「お、おはよ」

「お、う」

部屋の時計を見ればまだ6時だ。  

「ごめん、寝ちゃった」

「あー……。俺、ココア2杯も飲んだからなっ」

「ごめん」

「ばぁか、怒ってねぇし」

彰は人差し指で、私のおでこをツンとついた。
彰に揶揄われるのも、意地悪な顔も嬉しくなるのは何でだろう。 

「美紀子さんにはラインしてるからな」

「ありがとう」

母に対しても、こういう、まっすぐで、正直な所も、私が彰の好きな所の一つだ