「俺には挨拶ないの?愛子」

「何?お前ら知り合い?」 

「お前らと一緒、幼なじみだよ」

俺にそれだけ答えると、駿介は、愛子の瞳をじっと見ている。

「腐れ縁なだけでしょ」

愛子は、駿介の視線から目を逸らすと、飲んでいた苺ミルクの空きパックを、駿介の後ろのゴミ箱に弧を描くようにして放り投げた。軽い空気の音をたてて、スポンと吸い込まれる。

「愛子、お手柔らかに頼むよ」

口角を上げた駿介に、藤野愛子が、綺麗な二重瞼をきゅっと細めた。

幼なじみといっても、俺や砂月とは全然違う。駿介と藤野は、あまり仲は良くなさそうに見える。

「谷口先輩、本日から宜しくお願いしまーす」

駿介が、ニヤつきながら、谷口先輩に挙手しながら挨拶した。 

「マジかよ」

「彰、お前、嫌なら入んなくていいよ」

「入るに決まってんだろっ!」

「お前達っ!!今日から俺のことは母さんだと思って何でも頼ってくれよな!明日からグランド集合!ヨンロクヨンキューー!!」

谷口先輩が両手で、俺と駿介の頭をガシガシと撫でつけた。

(よろしくって言えよ)

あと母さんと聞いて、咄嗟に母ゴリラを想像して、俺は気分が悪くなりそうだった。

すでに頭が痛くなる様な面子だ。

ガハハハと、谷口先輩が、豪快に笑うと同時にチャイムが鳴った。