砂月から手渡されたのは、淡いブルーのハンカチだった。広げると、俺のイニシャルと共に向日葵の花が、幾つも刺繍してあった。

「え?これって……」

「うん、私が刺繍したんだよ、お母さんに教えてもらって。……お母さんは、彰のお母さんに教えてもらったって言ってたよ」

黄色にオレンジ、赤に葉の緑の糸を器用に使い分けて丁寧に縫われている。一針ずつ夜な夜な作業した砂月の姿が目に浮かんだ。

(寝不足で……)

ふと、砂月が、合宿で目眩を起こしたことを思い出す。

「もしかして……砂月、目眩起こしたのって……」

「あ、合宿の前後から作り始めて、慣れないこと夜な夜なして寝不足だったから……」

「……ごめん」

「ううん、私こそごめん。彰に嘘つきたくなくて変に隠したから」 

 嘘つきたくなくて、という言葉が嬉しくて、俺は、砂月の髪をくしゃくしゃっと撫でた。

「大事にする。やっぱ砂月は器用だな」

「でしょ」

 砂月が、得意げにそう言うと、俺に向かってパチパチと拍手した。