「砂月」  
「彰」 

自転車を停めると、互いに相手を呼び止めたのが、ほぼ同時だった。

「あ、彰、どうしたの?」  

先に駆け寄ってきたのは、砂月だった。

「いや……そのさ、この前は……ごめんな。……砂月は、全然悪く無いし、俺は……砂月が、誰を好きでもかま」

「ち、違うの!」

砂月の頬が、少し赤くなっている。

「誰にもいわねーよ」

「そ、そうじゃない!私はね、……私」

俺を見上げる、砂月の瞳が揺れて滲む。

「……砂月?」

砂月が、小さく深呼吸する。

「……私は、駿介君のことその、友達としては好きだけど、そういう好きじゃないの」

「え?でも」

「彰、聞いて。私、私はね、彰のことがね、ずっと……」

そこまで言った、砂月の口元を、俺は、左手で覆った。

砂月の言葉の続きがわからないほど、俺は馬鹿じゃない。

ーーーーこの言葉だけは、先に砂月には、言わせない。

「ちょ……待って」

 そう言った俺の心臓が、弾け飛びそうな位、跳ねる。跳ねては鼓動を、刻む。

多分、砂月にも、聞こえてるんじゃないだろうか。