「……そっか、彰が、そんな風に言う位、カヨおばあちゃんと茂さんが、素敵だったんだね」 

「そうだな……なぁ、砂月」 

ふと口角を上げた俺を、砂月が不思議そうな顔で見上げた。

「えらかったなっ」

「わっ」

強く抱き寄せると、俺は、砂月をぎゅっと抱きしめた。そしてすぐに離す。

「かえろう、砂月」

小さい頃と同じように、砂月の手を引いた。

お互いの掌からじんわりと体温を交換する。あの頃から俺は、きっと何も変わってない。
砂月が好きで、ただ側に居たいだけ。
 
この前、駿介に嫉妬したことが急に馬鹿らしくなった。

砂月が誰を好きでも、誰を想ってても、俺は変わらない。変わる必要なんてないし、砂月を好きなままでいい。

春宮神社を曲がって、俺たちが家にたどり着く頃には、陽だまりは夕日に変わり、見慣れた道は、オレンジ色に染まっていた。