「大丈夫。はじめるね」

そう言うと、砂月は、手と手を重ねて、少し俯くと瞳を閉じた。

砂月が、自らの意思で干渉して、憑かれる所を、俺は初めて見る。いつの間にか、手に汗を握っていることに気づいて、ジーンズで擦る様に拭いた。

ーーーー砂月は動かない。短い時間なのに、やけに長く感じる。僅かに閉じた睫毛が、揺れた時だった、砂月の重ねられた手の甲に一粒雫が落ちた。

「……さ、つき?」

ゆっくりと手を解くと、砂月が微笑んだ。砂月なのに、どこか切なくて懐かしくて、いつだったか、俺にも向けられたことのある、そんな安心する笑顔だった。

「……中田カヨと申します。まさか……砂月ちゃんにね、こんなことをして頂いて」

ゆるやかな微笑みに、俺自身も安堵する。

「あ、あの、砂月とその、話したんですか?」

「……ええ、交代?って言うのかしら?あまり時間がなくて、ただ、私を使っておじいちゃんに会って来てと……今ね、私とても嬉しいの。砂月ちゃんのおかげね」

「えっと……宜しく、お願いします」

合っているのかわからないけど、俺は、咄嗟にこの言葉しか出なかった。