「うん……上手くいったら、わざと私に憑いてもらうのは、初めてになる。施設に着いたら、茂さんに会う前に、おばあちゃんのこと想って、沢山、呼びかけてみようと思うの。何故だか分からないけど、できそうな気がする。私、おばあちゃんをどうしても茂さんに会わせたいっ」

砂月は、迷いを振り切るような顔で語気を強めた。
「そっか。わかった。……怖くない?」

憑かれる時、砂月が、震えて泣くのを俺は何度も見てきてる。

「彰が居てくれるから」

砂月はふわりと笑うと、自転車のハンドルは、そのままに、こちらに少しだけ体を傾けて、俺を見上げた。

「ちゃんと憑かれろよ、ちゃんと祓ってやるから」

砂月が、にこりと笑う。小さい頃と変わらない、俺が一番好きな砂月の笑った顔。